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「そう、やっと現れたのそれはよかった。あなたが見つけた人だから、よい人だと思うけれど急ぐことはありません。あなたの人生に大切な人のこと、得心ゆくまでおつき合をしてほしい」
話しているうちに息子も涙ぐんでいる。つられて私も泣いてしまった。よくよくの理由がない限り、親の反対などで後に引き下がる彼ではない。その夜、夫と心を引き締めて、息子の大事にあたっていこうと話し合った。
かって私は、息子の伴侶となる人を夢みた。ハンディを助けてくれる、苦労を知った心優しい普通の人とか、せめて彼よりも程度のよい人であってほしいとか、今思い出しても恥ずかしい愚かなことを願った時期があった。
しかし、彼の生きざまをしっかりと見守ってきた私も、その過程でたくさんのことを教えられ、鍛えられてきたと思っている。
自分で言うのも気恥しいが、もし人の幸せとは何かと問われたら、今の私は迷わずに答えが出せる。それは絶対に息子の存在があったからだと。
結婚は二人のこと。当然だが一言ですむ簡単なものではない。まず一番身近な二人を生み育てたそれぞれの親である。
私たち夫婦も改めて戸惑いがあった。しかし、息子のひたむきな姿に夫も私も協力することに決めた。信頼することで決断も早かった。
二人を紹介してくださった先生が仲人も受けてくださり、半年後、ゴールインした。そして

 

 

 

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